
「New Relic実践入門 第2版 オブザーバビリティの基礎と実現」という書籍を読みました。
New Relicの活用方法はもちろんですが、オブザーバビリティについても非常にわかりやすくまとまっており、オブザーバビリティの概念と実戦方法を学びたい人にも有効な書籍でした。
本記事では、書籍の概要と感想などを書かせていただきます。
本書の概要
本書は第2版となっており、最新のNew Relicに対応しています。
モニタリングやテレメトリといった基本的な概念から、アプリ、インフラ、DevSecOpsといった現場での実装・運用まで幅広くカバーされています。
そのため、開発者、SRE、セキュリティエンジニアといった立場を問わず役立つ内容となっています。
また、単にツールの使い方を説明するだけでなく、オブザーバビリティの思想や背景、なぜ重要なのかといった問いにも丁寧に向き合っている点が印象的です。
本書は3部構成になっています。
Part 1では、オブザーバビリティの重要性やNew Relicの全体像を解説しています。
Part 2では、各機能の詳細を深掘りしており、Part 3では、具体的なユースケースを紹介しています。
- Part 1 New Relicを知る
- 第1章 オブザーバビリティの重要性
- 第2章 New Relicの全体像
- Part 2:New Relicを始める
- 第3章 New Relic Synthetic Monitoring
- 第4章 New Relic Mobile
- 第5章 New Relic Browser
- 第6章 New Relic APM
- 第7章 New Relic Infrastructure
- 第8章 New Relic NPM
- 第9章 New Relic Log Management
- 第10章 New Relic Alerts & AI ①:New Relic Alerts
- 第11章 New Relic Alerts & AI ②:AI
- 第12章 DevSecOps
- 第13章 ビジュアライゼーション
- Part 3:New Relic活用レシピ
誰におすすめか
この書籍は以下のような方に特におすすめです。
- SREやインフラエンジニアとして、システム全体の状態把握に課題を感じている人
- New Relicを導入したが、うまく活用しきれていないチーム
- DevOpsやDevSecOpsを実践する中で、監視や可視化の高度化を目指している開発者
- 他の監視ツール(Datadog、Prometheus、CloudWatchなど)を使っており、New Relicとの違いを知りたい人
オブザーバビリティに関する知識が浅くても、Part 1でしっかり解説がされているため、これから学ぼうという人にも優しい内容になっています。
特に印象的だったのは、ツールの説明だけでなく、「その機能がなぜ必要なのか」、「どう活かせるのか」が常に語られている点です。
単なる操作マニュアルにとどまらず、実務に落とし込むための視点が全編に渡って書かれています。
各章の感想を抜粋
第7章 New Relic Infrastructure
サーバーやホストのリソース状況を可視化する「New Relic Infrastructure」について解説されています。
特に良かったのは、クラウド、Kubernetes、ミドルウェアなどから、統一的なメトリクスを収集・可視化ができることの意義が丁寧に書かれている点です。
スクリーンショットやハンズオン的な説明が豊富で、すぐに手を動かしたくなる内容でした。
加えて、インベントリ管理によって、どのようにシステム全体の健全性を保てるかについての具体例もあり、観測するだけで終わらない実践的な姿勢が伝わってきました。
クラウド時代のインフラ監視は複雑化していますが、このようなツールがどう貢献するかが実感できる章でした。
第11章 New Relic Alerts & AI②:AI
監視やオブザーバビリティの未来を感じさせてくれる内容です。
New Relic AIは、アラートノイズを抑え、重要なインシデントを自動で検知し、関連づけを行い通知する機能を提供します。
特に印象的だったのは、「ノイズ削減」や「インシデントの関連づけ」にフォーカスしている点です。
現代のシステムは、マイクロサービスやクラウドネイティブな設計により、非常に多くのメトリクスやログが日々発生しています。
従来型のしきい値ベースのアラートでは対応しきれない現実を背景に、AIによるアラートのグルーピングや、根本原因の推定といった機能の有用性が解説されています。
単なる技術的な説明にとどまらず、「人間が運用に集中するためにAIがどう支援すべきか?」という問いが根本にある内容でした。
第12章 DevSecOps
昨今では、DvSecOpsという言葉は一般化してきました。
DebSecOpsについて、「どう実践するのか?」という問いに対して、New Relicを活用した具体的な方法が提示されている点が良かったです。
特に、New Relic IASTによる動的なテストをすることで、コードレベルの脆弱性を特定したり、その脆弱性を引き起こすリクエストを再現する方法を示してくれる点は魅力的でした。
セキュリティを後工程ではなく、リアルタイムに観測するというシフトレフトの発想は、現代のソフトウェア開発において重要な概念になります。
従来の監視とセキュリティは別領域とされがちですが、本章ではそれらを融合させ、より高い信頼性や可用性を実現するための考え方がわかりやすく示されています。
まとめ
本書は単なる監視ツールとしての解説だけでなく、「オブザーバビリティとは何か?」という根本的な問いから出発し、New Relicでどのように実現するかを徹底的に追求した実践的な書籍でした。
また、モニタリングからオブザーバビリティへの発想転換、AIやDevSecOpsといった最新トピックへの丁寧なアプローチも豊富に盛り込まれており、New Relicユーザーはもちろん、それ以外の監視・可視化ツールを使っている方にとっても、「オブザーバビリティの教科書」としておすすめできる一冊でした。
オブザーバビリティの知見を深めたい方は、ぜひ読んでみてもらえたらと思います。